腕時計選びでその人が解る!?

腕時計を好きになったきっかけ~チュードル・プリンス

どうして筆者はこんなに腕時計に夢中になっているのか、と聞かれた際に、いつも思い出す一本の腕時計があります。 それが今、筆者の手元にある1980年代のチュードルのプリンスという少し小ぶりのシンプルな機械式時計です。

しかし、これは残念ながら、筆者が腕時計にのめり込んでしまうきっかけになったものの現物ではありません。 どうして、現物は今手元になく、わざわざ同じものをまた購入することになったのでしょう?

今回は少しだけ、筆者が腕時計に魅了されることになったきっかけについてお話してみたいと思います。

入学祝いにプレゼントされた腕時計

筆者の初めての舶来時計はオメガのシーマスター、とお話しましたが、それより前に一時期だけ、チュードルを手にしたことがありました。

今ではちょっと違っているのかもしれませんが、筆者が中学生位の頃は、入学祝いといえば腕時計か万年筆が相場でした。 その80年代のチュードルは、腕時計が好きな叔父から中学の入学祝にプレゼントされたものでした。

しかし、時代はすでに90年代。筆者の周りではカシオのGショックをはじめとする大型のデジタル時計が流行していましたので、最初はそれほど気に入っていなかったのを覚えています。デザインも古臭いし、一日放置すると止まってしまう機械式時計は不便だ、なんて感じていました。

今考えると、チュードルも立派な高級ブランドですので、中学生が持つものとしては贅沢すぎます。しかし、内心、Gショックの方がよかったな…なんて考えていたのを覚えています。

それでも、腕時計を気軽にねだることができるほど裕福な家庭でもありませんでしたので、そのチュードル・プリンスを毎日腕にはめて学校に通っていました。

壊れたら捨ててしまう…そんな時代

古い機械式腕時計を、アクティブな中学生が毎日使っているとどうなるでしょう?今の筆者であれば簡単に想像することができます。

ある日、突然針が外れてしまったのです。このままでは使い物になりません。そこで、機械いじりが好きだった筆者はケースをあけて自分で修理をしようとしてしまったのです。

裏蓋をラジオペンチでこじ開け、中を見るとその繊細な作りに感動してしまったのを覚えています。 小さなゼンマイの周りにいくつものギアが噛み合って動いている姿は、まさにこれまでに見たことのない世界だったのです。それが、筆者が腕時計にハマってしまった瞬間でした。

なんとしてもこの時計を修理しなければならない、と思いいろいろと弄りまわしました。しかし、まったく腕時計に関する知識のない中学生が機械式のムーヴメントを弄り回すと…当然、壊れてしまいます。

ゼンマイは変形し、いくつかのギアは折れてしまいましたし、竜頭の芯も変形してしまいました。 こうなってしまうと、一流の職人でも修理は困難です。汎用品のETAムーヴメントですので、丸ごと交換することになるでしょう。

いずれにしても、自分では対処することができず、結局、壊れてしまった腕時計は引き出しの奥にしまい込んでしまいました。

でも、裏蓋を開けた時の興奮を忘れることができず、その日から腕時計についていろいろと調べるようになり、夢中になって行きました。

再起不能になってしまったチュードルは今でも実家の引き出しの中にあります。いつかはしっかりと修理してまた使いたいな、と思いつつも、中古時計店で同じモデルを偶然見つけ、衝動買いしてしまいました。 あの時計の現物ではありませんが、今でもその時計をはめると中学生の頃にタイムスリップしてしまいます。